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 あなたも私も、この世界に生きる77億人全員が、生涯を共にするもの、それが〈名前〉。「名は体を表す」ということわざにもあるように、人生を左右するほど重要なものであるにもかかわらず、基本的には自分では選べない。そんな、ある意味パラドックスなところも万国共通の儀式である〈名づけ〉をテーマにしたフランスの舞台が、2010年にパリで初上演され、イギリス、ドイツでも大成功を収めた。子供に“アドルフ”と名づけてよいのかどうか? その問いに対して考え得るあらゆる答えを、フランスらしいエスプリを効かせて提示した作品で、映画化もされてヨーロッパで大ヒットを記録した。
 “アドルフ”とは、もちろん“アドルフ・ヒトラー”のこと。ナチス・ドイツの独裁者にして第二次世界大戦を引き起こし、ユダヤ人大虐殺を指導した男だ。“アドルフ”は、元々ドイツでは人気のある伝統的な名前で、現在もその名をつけることが法律で禁止されているわけではないが、当然ながら戦後生まれの男の子にはほぼ皆無となった。
 『ベルンの奇蹟』でドイツ映画賞銀賞に輝いたプロデューサーのトム・シュピースがこの物語に惚れ込むと共に、ドイツ人として黙って見ているわけにはいかないと奮起して映画化権を獲得し、監督に『ベルンの奇蹟』でタッグを組んだ名匠ゼーンケ・ヴォルトマンを迎えた。製作陣は舞台をパリから旧西ドイツの首都だったボンへと移し、ナチズム(国家社会主義)に対するドイツの戦後75年の“本音と建て前”に、たっぷりのユーモアとウィットを盛り込み、ドイツの“今”を描き切った作品に結実させた。
本国ドイツで150万人動員のスーパーヒットを成し遂げた話題作が、いよいよ日本にも知的バトルの挑戦状をたたきつける!

 シュテファンには『帰ってきたヒトラー』のクリストフ=マリア・ヘルプスト、エリザベトには舞台の名優として知られるカロリーネ・ペータース、トーマスには『はじめてのおもてなし』のドイツ随一の人気スター、フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、レネには『コーヒーをめぐる冒険』のユストゥス・フォン・ドホナーニ。
 実力派俳優たちによる迫真のノンストップバトルに引き込まれ、観る者は4人目の客として名づけ論争のテーブルに招かれる。真夜中も過ぎた宴の後のテーブルには、“真実”をたたえたグラスだけが残される。ほろ苦いその杯を飲み干した5人には、新たな絆が生まれていた。バトルを見届けたあなたにも、頭と心を刺激するカタルシスが贈られる、爽快かつ痛快な知的エンタテインメント!
それは愉快な夜になるはずだった。哲学者で文学教授のステファンと妻エリザベスは、弟トーマスと恋人、幼馴染の友人で音楽家のレネを招いて自宅でディナーをすることになっていた。しかし、出産間近の恋人を持つトーマスが、生まれてくる子供の名前を“アドルフ”にすると発表したことから自体は意外な展開に。「アドルフ・ヒトラーと同じ名前を子供につけるのか?気は確かか!?」友人のレネも巻き込んだ大論争の末、家族にまつわる最大の秘密まで暴かれる。名前の話はドイツの歴史やナチスの罪に発展し、ヒートアップした夜はどこまで続く…!?
エリザベトの夫。ボン大学の教授で、専門はドイツ現代文学。毎年、世界中で講演会もするほど高名。歴史、芸術、物理など幅広い分野に造詣が深く、家庭では文学ネタのジョークを仕掛けてくる。インテリっぷりが時折鼻につく。
1966年2月9日ドイツ・ヴッパータール生まれ。銀行員の研修を得たあと、舞台俳優として活動を始める。その後TVドラマ、映画へ精力的に出演。主な作品に『チャーリーはスーパーカー』(’06)、『帰ってきたヒトラー』(’15)など。
学校の国語教師。貧困家庭の生徒でも修学旅行に行ける制度を作るなど、モットーは「多様性の尊重」。夫のシュテファンとは、小学校からの幼なじみ。家事のほとんど全てを一人でこなしていて、最近料理の腕をメキメキと上げている。
1971年9月7日ドイツ・マインツ生まれ。ベールブリュッケンの演劇学校を卒業し、ハンブルグやスイス・チューリヒの劇場で活動。その後2004年より、オーストリアの名門・ブルク劇場のメンバーとなる。 映画やテレビでも活動する演劇スター。
エリザベトの弟。高卒だが仕事で大成功。「イヌイットにアイスも売れそう」なほどの商才の持ち主。高級不動産を売り、高級車を乗り回す。学歴がないことで義兄シュテファンからは見下されているが、稼ぎが良いことで妬まれている。
1974年11月20日ドイツ、ミュンヘン生まれ。高校卒業後、ボストン音楽院で学び、舞台デビュー。主演と脚本を務めた「ヴィンセントは海に行きたい」(10/TV放映)では、ドイツ映画賞において最優秀作品賞など、多数の映画賞を総なめにした。ドイツ国内で400万人を動員した大ヒット作『はじめてのおもてなし』('16)にも出演。ドイツが誇る大人気イケメン俳優。
エリザベトの大親友、シュテファンやトーマスとも幼馴染。職業はボン楽団のクラリネット奏者。独身で、お菓子作りや料理が得意。優しく繊細で、聞き上手という温和な性格。てんびん座で、好きな色は紫とオレンジ。
1960年12月2日ドイツ・リューベック生まれ。父は世界的に著名な指揮者のクリストフ・フォン・ドホナーニ。ハンブルクで演劇を学んだのち、テレビシリーズでデビュー。主な映画出演作品に『ヒトラー ~最後の12日間~』('04)、『黄金のアデーレ 名画の機関』('15)など。
トーマスの恋人。妊娠中。女優を目指していて、数々の舞台のオーディションを受けている。育休を自分だけが取ることに不満気味。家族最大の秘密を知るキーパーソン。
1989年10月2日ドイツ・フーズム生まれ。演劇一家の家庭で育ち、幼少期から子役で数々のテレビドラマに出演。2016年からは週替わりで料理レシピを動画で投稿する“Janina and Food”をスタート。Instagramでは約70万人のフォロワーを持ち、インフルエンサーとしても活躍。2016年以降、フランスの化粧ブランド・ランコムのブランドアンバサダーも務める。
エリザベトとトーマスの母。古い考えに囚われない性格で、夫の死後、“開花”し、山に移住。難民受け入れに賛成だが、村が保守的なため、住民投票を申請するべく署名活動に注力している。ディナーには電話で参戦?
1950年8月12日ドイツ・デトモルト生まれ。これまで150作を超えるテレビシリーズや映画に出演。主な映画出演作に『キラーコンドーム』('96)、『アム・アイ・ビューティフル?』('98)など。2010年には、名優ブルーノ・ガンツと共にドイツアカデミー協会会長に選出された。
1959 年8 月25日ドイツ・マール生まれ。ミュンヘンの大学とロンドン、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで映像を学ぶ。’91 年に“Allein unter Frauen” で監督デビュー。’94 年の映画「アクセルの災難」(日本未公開)はドイツ国内で660 万人の動員数を記録し、同年ドイツ映画賞において最優秀監督賞を受賞した。2001 年にハリウッドデビュー作“The Hollywood Sign” を監督。’03 年にはサッカー・ワールドカップ・スイス大会の西ドイツ代表の勝利を描いた『ベルンの奇蹟』が350 万人のヒットとなった。舞台監督としても20 年に渡って活躍しており、監督を務め’96 年に初演を飾ったウディ・アレン脚本の『ブロードウェイと銃弾』は大成功を収めた。’18 年にはヴィッキイ・バウムのアカデミー賞にも輝いた同名舞台劇『グランド・ホテル』の公演もヒットとなった。
1991年
「Allein unter Frauen」
1992年
「Kleine Haie」
1993年
「Mr. Bluesman」
1994年
「アクセルの災難」
1995 年東京国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門出品作
1996年
「Das Superweib」
1998年
「Der Campus」
1999年
「St.Pauli Nacht」
2001年
「Der Himmel von Hollywood」
2003年
『ベルンの奇蹟』
2006年
「Deutschland. Ein Sommermärchen」(ドキュメンタリー)
2016年
Débarquement immédiat!
2009年
「Die Päpstin」
2012年
「Das Hochzeitsvideo」
2013年
「Schoßgebete」
2015年
「Frau Müller muss weg!」
2017年
「Sommerfest」
2018年
『お名前はアドルフ?』