母親が家族のもとを去り、残された父親が仕事と育児に悪戦苦闘しながらも初めて子供と向き合い、深い絆を結んでいくまでを描いた物語と聞けば、誰もが映画史に輝く傑作『クレイマー、クレイマー』を思い出すだろう。家族の愛と葛藤という普遍的なテーマはその名作から引き継ぎながら、今、世界中の人々が抱える未来の見えない困難な時代を生きる不安と、それでも前を向こうとする親子の勇気と希望を爽やかに描き出すヒューマンドラマが誕生した。
監督は、長編映画初監督作となる「Keeper」で、70を超える映画祭に招待され20以上の賞を受賞したベルギー生まれのギヨーム・セネズ。長編2作目となる本作も2018年のカンヌ国際映画祭批評家週間に出品されて称賛され、その高評価と人気は今ヨーロッパでとどまるところを知らない逸材だ。仕事一筋でダメなところもあるけれど心優しい父親を、大ヒット作『タイピスト!』でフランス映画の“顔”となったロマン・デュリスが熱演。オリヴィエの妹には、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞した作品『若い女』で主演を務め、フランスの若手女優のトップに躍り出たレティシア・ドッシュ。オリヴィエの子供たち、エリオットとローズには、監督がオーディションで大勢の子役から見出した二人が選ばれた。母親を恋しがる姿があまりに意地らしく、今すぐスクリーンに飛び込んで二人を助けたいと願わずにはいられない。妻の大切さに改めて気がつき、成長していく父と子供たちが、希望と爽やかな感動を届けてくれます―――。