映画『苦い涙』公式サイト
鬼才にして巨匠フランソワ・オゾン監督×イザベル・アジャーニ 最新
6月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 ほか 全国順次公開
監督・脚本:フランソワ・オゾン

INTRODUCTIONINTRODUCTION

ファスビンダー、ダグラス・サークの再来とも言うべき、フランソワ・オゾン最新作

『Summer of 85』『すべてうまくいきますように』など話題の第72回ベルリン国際映画祭のオープニングを華々しく飾った本作は、オゾン監督が『焼け石に水』以来20年ぶりに、鬼才ファスビンダーの名作『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1972)の再創造に挑んだ。現代的な視点とオゾン特有の美意識に基づくアレンジが施され、風刺やユーモアをふんだんに織り交ぜた語り口は驚くほど軽やか。刺激的なヴィジュアルと音楽など、見どころの尽きない濃密でエモーショナルなメロドラマが完成した。アート映画の愛好家で、ファスビンダー好きで知られる鬼才、ジョン・ウォーターズ監督は、毎年発表している私的な映画ベストテンの2022年版にて、本作を「圧倒的なベストワン」に選出している。

Introduction

フランス屈指の人気俳優ドゥニ・メノーシェ、
映画界の生きるレジェンド、名優イザベル・アジャーニらが豪華競演!

著名な映画監督ピーター・フォン・カントは、恋人と別れて落ち込んでいた。そこへ、3年ぶりに訪ねて来た大女優で親友のシドニーが、美しい青年アミールを連れてやってくる。ピーターはたちまちアミールに恋をするが…。物語の舞台をアパルトマンの一室に限定した本作は、すでに映画監督として成功しながらも、プライベートでは孤独と不安に苛まれている主人公ピーターの姿を通して、愛というものの本質をあぶり出していく。
主人公ピーターを演じるのは、『ジュリアン』『悪なき殺人』などでフランス屈指の人気俳優となり、2022年の東京国際映画祭グランプリ受賞作『ザ・ビースト』で最優秀男優賞に輝いたドゥニ・メノーシェ。アカデミー賞2度のノミネート、セザール賞最多5回受賞のイザベル・アジャーニがスター女優役で、オゾン作品初登場。ファスビンダーのミューズでオリジナル版にも出演したハンナ・シグラ、ピーターを虜にする美男子アミール役の新人ハリル・ガルビアら若手を加えたアンサンブルが絶妙な面白さで魅了する。

StorySTORY

著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)は、恋人と別れて激しく落ち込んでいた。助手のカール(ステファン・クレポン)をしもべのように扱いながら、事務所も兼ねたアパルトマンで暮らしている。ある日、3年ぶりに親友で大女優のシドニー(イザベル・アジャーニ)が青年アミール(ハリル・ガルビア)を連れてやって来る。艶やかな美しさのアミールに、一目で恋に落ちるピーター。彼はアミールに才能を見出し、自分のアパルトマンに住まわせ、映画の世界で活躍できるように手助けするが…。

CAST

ピーター・フォン・カント : ドゥニ・メノーシェ
Peter von Kant : Denis Ménochet

1976年9月18日フランス、ヴァル=ドワーズ生まれ。『イングロリアス・バスターズ』(2009)に出演し、注目を集める。その他出演作は、第74回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞の『ジュリアン』(17)、フランソワ・オゾン作品では『危険なプロット』(12)、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(18)、ドミニク・モル監督『悪なき殺人』(19)など。'22年『ザ・ビースト』で東京国際映画祭最優秀男優賞を受賞。フランスでもっとも注目度の高い俳優のひとり。

ドゥニ・メノーシェ

シドニー・フォン・グラーゼナプ : イザベル・アジャーニ
Sidonie von Grasenabb : Isabelle Adjani

1955年6月27日 フランス、パリ生まれ。14歳の時に“Le Petit Bougnat”でデビュー。『アデルの恋の物語』(75)では19歳で主演を務め、米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされる。’81年に、『カルテット』『ポゼッション』でカンヌ国際映画祭女優賞、『カミーユ・クローデル』(88)でベルリン国際映画祭女優賞受賞、米アカデミー賞主演女優賞に再びノミネート。セザール賞の主演女優賞を5度受賞し最多を記録。2010年にレジヨンドヌール勲章を、’14年に芸術文化勲章を受勲した。その他出演作『王妃マルゴ』(94)、『ボン・ボヤージュ』(03)など。

イザベル・アジャーニ

アミール・ベンサレム : ハリル・ガルビア
Amir Ben Salem : Khalil Gharbia

1999年生まれ。チュニジア出身の父親はダンサー、振付師。2017年~19年まで、パリの演劇学校で学ぶ。’20年スウェーデンの短編映画“The night train”に出演。Netflixのドラマ“Les 7 vies de Léa”(22)では主演をつとめて大ヒットを記録。本作が長編映画初出演だが、“Le Paradis”(23)にも主演を果たしており、今目が離せない新鋭といえる。

ハリル・ガルビア

ローズマリー : ハンナ・シグラ
Rosemarie : Hanna Schygulla

1943年12月25日 ドイツ、シレジア地方(現在はポーランド)生まれ。シャンソン歌手としても活躍。80年代にファスビンダー監督作品に多く出演し世界的に知られる。ベルリン国際映画祭銀熊賞・主演女優賞受賞『マリア・ブラウンの結婚』(79)、『リリー・マルレーン』(81)など23本の作品に出演した。’83年の『ピエラ 愛の遍歴』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞している他、2009年『そして、私たちは愛に帰る』で全米映画批評家協会賞助演女優賞を受賞。オゾン監督作品には『すべてうまくいきますように』(21)に引き続いての出演となる。

ハンナ・シグラ

カール : ステファン・クレポン
Karl : Stefan Crépon

2011年、テレビシリーズ“Famille d'accueil”で子役としてデビュー。その後、コンセルヴァトワールに入り本格的に演技を学ぶ。エリック・ロシャンの人気テレビシリーズ“Le Bureau des Légendes”(18−20)、フィリップ・ガレルの『涙の塩』(20)、Netflixの人気作『Lupin/ルパン』(12)などに出演する。’23年セザール賞の有望若手男優賞にノミネートされた。

ステファン・クレポン

ガブリエル(ガビ) : アマント・オディアール
Gabriele (Gaby) : Aminthe Audiard

2005年2月16日生まれ。名脚本家ミシェル・オディアール(ジャック・オディアール監督の父親)の曾孫。
“Paris Willouby”(15)、トラン・アン・ユンの『エタニティ 永遠の花たちへ』(16)に子役で出演。テレビシリーズでも「バルタザール 法医学者捜査ファイル」(18-19)等で準レギュラーとして好演している

アマント・オディアール

DIRECTOR

フランソワ・オゾン
François Ozon

1967年11月15日、フランスのパリ生まれ。'93年にパリ第一大学の映画コースを卒業。’96年、『サマードレス』でロカルノ国際映画祭短編セクション・グランプリを受賞。短編王の名をほしいままにした後、’98年、長編映画デビュー作『ホームドラマ』がカンヌ国際映画祭批評家週間で注目される。2000年に、ファスビンダーの戯曲の映画化『焼け石に水』でベルリン国際映画祭テディ賞を受賞。以降、ベルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭の常連となる。『まぼろし』(00)、『8人の女たち』(02)、『危険なプロット』(12)、『婚約者の友人』(16)、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(18)、『Summer of 85』(20)でセザール賞監督賞にノミネートされている。また、 オゾン初の事実を基にした社会派ドラマ『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプ)を受賞、現在のフランス映画界を牽引する巨匠として世界からも認められる。’21年、ソフィー・マルソーを主演に迎え、安楽死をテーマに『すべてうまくいきますように』を公開。

KEYWORDKEYWORD

Rainer Werner Fassbinder
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

劇作家・映画監督。1945年5月31日、連合国軍占領下のドイツ、バイエルン自由州バート・ヴェリスホーフェン生まれ。’67年に劇団「アクション・テアーター」に参加。同劇団解散後の’68年、仲間たちとともに劇団「アンチテアーター」を設立。劇団メンバーとの挑発的かつ実験的な長編映画制作を始める。’72年『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を発表、’74年にはダグラス・サーク監督にオマージュを捧げた『不安は魂を食いつくす』が第28回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞する。’78年、ハンナ・シグラを主演に迎えた『マリア・ブラウンの結婚』により、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督として世界的に認められる。’82年『ベロニカ・フォスのあこがれ』は、第32回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。バルバラ・スコヴァ主演『ローラ』(81)と合わせて「西ドイツ三部作」として知られる。’82年6月10日、37歳でコカインの過剰摂取で急死。女性の抑圧、同性愛、ユダヤ人差別、テロリズムなどのテーマを多く描き、激しい議論を巻き起こした。

PAINTINGS

「ミダス王とバッカス」 ニコラ・プサン(1594年-1665年) 17世紀、バロック全盛の時代のフランスの画家であるが、作風は古典主義的な宗教画や歴史画が多く、また制作の多くはローマでなされた。バッカス(ローマ神話における酒の神で、ギリシャ神話ではディオニュソス。ギリシャ神話中のミダス王はディオニュソス神に対し、手に触れるものすべてを黄金に変えて欲しいと願う)を主題にした作品はいくつか描いているが、「ミダス王とバッカス」はローマにおいて1629年から30年頃の制作とされる。

SONGS

「人は愛するものを殺す(Jeder tötet was er liebt/Each Man Kills the Things He Loves)」 オスカー・ワイルド(1854年- 1900年)が同性愛の罪として収監されたことを詩にした「レディング牢獄のバラード」をもとにファスビンダーの盟友でもあった音楽家ペーア・ラーベンが作曲。『ファスビンダーのケレル』(82)でジャンヌ・モローがキャバレーで歌う曲であるが、本作ではイザベル・アジャーニがドイツ語でカヴァーしている。

COMMENTCOMMENT

圧倒的に、2022年最高の映画!!ジョン・ウォーターズ(映画監督)

愛が人間を愚かにするのか、それとも愛が人間の愚かさを露呈させるのか。そこにうごめく激情が自分からさほど遠くないことに失望しながらのめり込む、見事な室内劇だ。奥浜レイラ(映画・音楽パーソナリティ)

お洒落で(珠玉の70sインテリアや衣装の数々に悶絶!)妙に可笑しい作風も、どこか『焼け石に水』と共通して、一見すると原点回帰ともいえます。しかし!これまでの監督としての経験とキャリアだからこそのオゾンの成熟ぶりは──技術やテーマ性、全てにおいて──目を見張るばかりで、その辺も存分に堪能頂けるかと思います。大島依提亜(グラフィックデザイナー)

エゴイスティックな愛に翻弄され、心を掻き乱され、己を傷つけていく主人公の哀しさを見事に体現して居る主演ドゥニ・メノーシェが圧倒的で素晴らしい!片岡鶴太郎(俳優・画家)

ファスビンダーを召喚したらアルモドヴァルやグリーナウェイまで付いてきてしまい、
「重冷苦劇」と「軽暖喜劇」、リーベとアムールの逆転をしっかり見せる痛快作。
ひょっとしたらコレ、オゾンの最高傑作じゃないの?
菊地成孔(音楽家・文筆家)

身構えて観たが、笑った。ユーモラスだからこそ悲しい。
オリジナルのファスビンダー監督作ってこんなに面白かったっけかと思い、
『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』をDVDで観直してみたら、
意外にも場所と性別と職業以外、さほどシナリオ上の改変は無くて喫驚した。
演出と俳優による見事な戯画化に拍手。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家・音楽家)

なんて毒々しく、浮世離れした美しさなのだろう!
フランソワ・オゾンという映画作家に一生ついていくと、決意を新たにした。
児玉美月(映画批評家)

まるで「舞台」を観ているような臨場感。単純な分あまりに濃厚な演出。
登場人物がお互いを罵倒し合う壮絶な会話劇は精神的バイオレンス。
中毒性ある85分間の刺激に、オゾン監督の凄さを見た。
齋藤薫(エッセイスト)

恋愛のドツボにハマったあられもない姿に共感。
ピーターと一緒に過去の自分を抱きしめてあげることで浄化されます。
辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

美醜が入り乱れる世界で、寡黙な助手の雄弁な瞳に惹かれた。
薄い身体に溜められた、苦い熱。放出の瞬間は涙より哀しい。
SYO(物書き)

支配と従属、関係性の逆転、そして絶望と恍惚。演劇的世界で繰り広げられる中年男の大仰な愛の物語は愚かしく滑稽で、フランソワ・オゾンの色彩に溢れている。 津田健次郎(声優)

悲劇なのか、喜劇なのか。純愛なのか、メロドラマなのか。美しいのか、グロテスクなのか。
そんな思いに翻弄されながら、「苦い涙」の持つ魅力にまんまとはまってしまった。
野宮真貴(歌手・エッセイスト)

眩しい肉体と果てしない野心を持ってやってきた若い男に翻弄される中年の監督、今絶好調の監督オゾンが放つ、優しく、過酷な大人の愛のドラマ、見逃せない一作。 村上香住子(作家・ジャーナリスト)

翻弄されることの愚かさをどうしようもなく見つめてしまう。プライド、欲望、壁、鏡、そして窓に閉じ込められた哀しき男のメロドラマ。ゆっきゅん(DIVA)

軽快に豪速展開する、おごる中年色ボケ騒動記。
ピリ辛ファスビンダー版と別物でオゾンらしい味付け!
よしひろまさみち(映画ライター)

(五十音順・敬称略)