手を出して。つらい時は手を握るの。今がそう──
 6歳だった、マロニーが最初に深く傷ついたのは──。2か月も学校を休んでいることで、母親(サラ・フォレスティエ)と共にフローランス判事(カトリーヌ・ドヌーヴ)から裁判所に呼び出された時のことだ。責められて逆上した母親は、判事にマロニーを「くれてやる!」と叫ぶと、息子を置いて立ち去ってしまった。
 あれから10年、成長したマロニー(ロッド・パラド)は問題ばかり起こし、再び判事から裁判所に呼び出される。反抗的な態度で判事と目も合わさないのに、母親が責任を問われると慌ててかばうマロニー。実の父は早くに亡くなり、継父にも捨てられた彼にとって、自分勝手でだらしない母親でも大切な家族なのだ。判事はそんな彼に、教育係をつける“児童教育支援”を受けさせることにし、「次は刑事問題よ」と警告する。
 だが、程なく「次」は起きた。通りすがりの相手に暴力を振るい車を奪ったのだ。すぐに審問が開かれるが、マロニーは「反省しない。俺の人生だ」と言い放つ。それでも判事は温情を加えて、検事が主張した少年院ではなく、より自由に過ごせる更生施設送りを選択する。
 新しい教育係のヤン(ブノワ・マジメル)の車で、山の麓にポツンと建つ施設に送られるマロニー。そこには似たような境遇の少年たちが集まり、顔を見ればすぐにケンカを吹っ掛け合っていた。まるで野生動物のような彼らに、指導員たちは根気よく勉強や仕事を教え、他人との付き合い方を学ばせる。
 定期的に顔を見せるヤンにも励まされ、少しずつ良い方向へ向かっていったマロニーは再入学の面接を受けるが、面接官の否定的な言動にキレてしまう。自棄になって出掛けたクラブで、マロニーは指導員の娘で顔見知りのテス(ディアーヌ・ルーセル)と出会う。以前から互いを気にかけていた二人は、不器用な恋におちていく。
 週に2回だけ許された母親との電話では、子どもに戻って「会いたい」と涙ぐむマロニー。そんな折、判事がマロニーの誕生日に施設を訪ねてくれる。マロニーは判事が忘れていったスカーフを、その日の記念にするかのようにそっとポケットに隠すのだった。
 半年が経ち、施設を出たマロニーは職業研修を受けることになり、ヤンが探してきた飲食店で働く。だが、すぐに無断欠勤をした上に迎えに来たヤンをハサミで脅したマロニーは、判事から担当を降りると宣告されてしまう。涙ながらにヤンに殴られたと訴え、彼もかつて非行少年だったことをなじり、感情を爆発させるマロニー。判事はマロニーと二人きりになると、ただ手を握ってやる。それから判事は後悔するヤンにも「信頼してるわ」と温かい言葉をかけるのだった。
 なんとかマロニーは真面目に働き始めるが、母親の堕落した生活のせいで、弟のトニが養護施設に入れられる。マロニーはクリスマスを家族で過ごすために、車を盗み夜中にこっそりとトニを連れ出すが、施設に戻りたいと訴えるトニと言い合ううちに、事故を起こしてしまう。
 弟にケガを負わせ、今度ばかりは深く反省するマロニーに、判事は刑務所での拘留という厳しい判決を下す。裁判まで1か月、試練を迎えたマロニーの人生をさらに大きく変えるある事実が発覚する──。